広島高等裁判所岡山支部 昭和27年(う)72号 判決
原判決が原判示の各場所に架設してある各電線を、切断領得した被告人の所為を以つて、窃盜罪を構成すると同時に公益事業令第八十三条所定の妨害罪をも構成するものとして、刑法第二百三十五条の外に同事業令第八十三条を適用処断していることは所論の通りである。
しかし公益事業令第八十三条所定の妨害罪は、故意によつて電気工作物を損壊し、これに物品を接触し、その他電気工作物の機能に障害を与える行為と、その行為の結果として電気の供給又は使用を妨害したことによつて成立するものであつて、それらの行為によつて電気の供給使用に対する現実の障害、すなわち実害の発生したことまでを必要とするものではないが、すくなくとも実害発生の危険ある状態を成立せしめたことを必要とするものである。従つてたとい電気工作物に対し、損壊、接触その他機能障害を与えるような行為があつたとしても、その電気工作物が、使用廃止中のものであつて、損壊等の行為によつて電気の供給使用に実害を与える危険性のない場合の如きは、毀棄罪の成否は別として、本条の妨害罪の成立する余地はないものといわねばならない。しかるに原判決は被告人の本件所為を以つて本条の妨害罪を構成するものと認定しながら、単にその電線の品目、数量、架設してあつた場所、管理者の氏名等を判示したのみで、所論の如くそれが現に電気工作物として使用中のものであつたか或は使用廃止中のものであつたか、原判決の事実摘示の部においてその説示を与えないのは勿論、挙示の証拠によつても一部の事実を除き大半の認定事実につき明確でないのである。これを要するに原判決には弁護人所論のような理由の不備があり破棄を免れないものといわねばならない。